真夏の温泉、近場でできるだけ涼しい所はどこかと思案中、目に入ったのは大涌谷のニュース。ということでめったに近寄らない箱根、神山の反対側で噴火とは無関係な芦之湯温泉をチョイス。標高850mでも太平洋側だからと半信半疑だったが、さすがは伝統の避暑地。梅雨明けした都心が35度近くでも、こちらはせいぜい27~8度。雲(というより霧)が出て陰ってしまえば肌寒いくらいで、真夏の不思議な温泉日和となった。
大浴場の二つの浴槽は微妙に温度が違い、奥は所により42~43度、手前は比較的低温で40~41度。含硫黄CaNaMg硫酸塩炭酸水素塩泉(硫化水素型)、この組み合わせでなぜか弱アルカリ性。温泉マニア向けのクイズになりそうなくらい珍しい、繊細かつ極上の泉質。成分はさほど濃くなく、溶存物質計1056mg/kg。あと6%薄ければ単純硫黄泉となるはずで、長野の五色温泉なんかとよく似ている。硫化水素イオンが(もちろん匂いも)濃いのを除けば薄味でさっぱり、しかも関東では貴重な準炭酸水素塩泉。
この宿ではなんと言っても源泉を引いた部屋風呂が魅力。到着時に早くも掛け流しにされており、白と黒の湯の花がたっぷり沈殿していた(ひと晩放置? ならグッドジョブ)。このお湯は張り方というか冷まし方で発色が変わるようで、少しずつゆっくり冷ましながら溜めると硫酸塩泉的な透明な緑に、
勢いよく溜めた高温の湯を激しくかき混ぜて冷ますと炭酸水素塩泉的な乳白色になる、ようだ(素人考えの素人実験)。
料理が良すぎたりして分不相応な気がしないでもないが、交通費ほどほどで片道1時間半で行ける天国となれば、冬のシーズン本番にまた行くことになるだろう。