2012年3月24日土曜日

小谷温泉山田旅館

高尾駅には誘惑が多い。東京行き快速の反対側にはいつも小淵沢行きや松本行きがいて、通勤装備のままふらっと下ってしまいたくなる。とりあえず週末、乗ったらどうなるのか試してみた(ということにしておく)


散文的なところはざっくりはしょって、6時間後には雪景色の大糸線、


さらに1時間半後には小雪の降る中、山の中の温泉を目指して歩いていた。


小谷温泉山田旅館、大正時代に建てられた木造三階建ての湯治宿に一泊することにした。帳場のある棟は江戸時代の築だったり文化財級の古さだが(いやいや、本当に文化庁の登録有形文化財)、これまで何軒か泊まった同年代の宿に比べても例外的な「現役」感がある。しかも豪雪地帯、維持は並大抵の苦労ではないだろう。


上の写真の中央あたりにある、元湯浴室の入り口。このあたりは大正の築。床も扉も階段も、全面的に手入れが行き届いていて気分がいい。


やや白濁したNa炭酸水素塩泉、42度。2mほど落下させて温度調整しているだけの、理想的と言っていい源泉の使い方だ。遊離二酸化炭素300mg少々と微量ながら、浴室真裏で自噴しているという鮮度のおかげでしっかり炭酸感がある。金属成分の錆び味もほんのり。


寝湯があるのもうれしい。すべすべ柔らか上品な肌触りのお湯と、析出物でつるつるした寝床のコンビネーションが最高。似た泉質でも塩化物泉(ねばる)や硫酸塩泉(きしむ)だとこうはいかないだろう。


重曹成分が90%を占めるほぼ純粋なNa炭酸水素塩泉なので、もし将来、五感を完璧に再現できるマルチメディア百科事典を作ることになったら、この泉質の代表として掲載したいものだ。