2013年11月22日金曜日

下諏訪温泉鉄鉱泉本館

諸般の事情によりアマテラスの息がかかった神社を参拝するわけにはいかないので、娘の七五三は諏訪大社に詣でることにした。しかも温泉をからめるとなれば、門前町、宿場町、温泉町の三拍子そろった下諏訪温泉一択。旧中山道に面した鉄鉱泉本館に宿を取った。

隣りの旦過の湯に来た時に目をつけていたこの宿、この玄関だけでただ者ではないことは自明。元は料亭とのことだが、築80年のこの佇まいはまぎれもなく宿場町のそれだ。


客室も運よく街道側の古い部屋に当たった。戸や欄間の細工がすばらしい。ただし、古さなりのすきま風などがあり快適性を求める向きにはお薦めできない。


浴室は増築された山側の新館(?)にあり、何の変哲もない内風呂が男女各一、朝は入れ替わる。ピリッと熱いNaCa硫酸塩塩化物泉44度、キュキュっときしむ感覚は硫酸塩泉的だが成分はごく薄い。投湯口でかろうじてかすかな硫化水素臭、浴槽では無臭。


下社秋宮までゆっくり歩いて10分。それにしても、重文の神楽殿で祈祷を受けられるとは思わなかった。出雲風の注連縄は祭神を暗示する仕掛けか。


2013年9月13日金曜日

犬山温泉名鉄犬山ホテル

温泉ではないのでメモとして。


冷鉱泉の沸かし湯、循環。つくづく愛知は温泉不毛地帯だな、と。味のある昭和型クラシックホテル(?)ではある。

2013年8月11日日曜日

川浦温泉山県館

甲府で連日40度の猛暑を記録しているさなか、何を血迷ったか山梨の温泉に行ってしまった。もっとも、この通り山峡の川筋で標高は700mほど、30度中盤の気温の割にはすごしやすかったが。ふだん露天風呂はあまり重視しないが今回ばかりはキラーコンテンツ、宿本体からはエレベーターと長い廊下で下りていく。


上から見た露天風呂。川より一段高くなっていて風がよく通り、景色も申し分ない。栃木北部や南会津に来たような錯覚を起こしそうだが、交通量の多い国道沿いにあり鄙びた感じはしない。


かすかに硫化水素臭のあるアルカリ性単純泉、40度弱。夏にはちょうど良い温度だが、冬はどうだろう。


お盆のピーク期で満室ながら、ふたつある貸切風呂も希望通り使えた。いずれも内風呂と半露天風呂がひとつずつあり、広く小奇麗な脱衣所が子連れには有難い。内風呂41度。大浴場を含めどこも湯量は豊富、泉質はすべて同じ。


意外と温泉の乏しい山梨東部にあって、このレベルの宿は貴重だ。お湯も雰囲気も石和なんかより余程いい。八王子から一時間少々という近さはもろ刃の剣だが、旅行気分を盛り上げたければ奥多摩や秩父を経由すればいい。

2013年6月9日日曜日

上諏訪温泉大和温泉・湯小路いきいき元気館

上諏訪の湯小路は一見ただの市街地なのに、共同浴場が林立している不思議な土地だ。ペンキの板壁がいい味出してるこことか、


名前すらよくわからないこことか。


もっともこれらは地元民専用で、よそ者を受け入れてくれるのは大和温泉だけ。箱根や伊豆の硫酸塩泉のように薄緑がかった極上の単純硫黄泉、42-3度。総硫黄が60mg超と酸性泉でもないのに濃厚、関東甲信越ではこの部門随一だと思う。


しかし、シャワーどころかカランすらない大和温泉は難易度高く、嫁子供を連れていくにはちょっと辛い。そこで隣接する福祉センター「湯小路いきいき元気館」。どこにでもある公共施設だが、源泉は大和温泉と同じ、循環ながらしっかり硫化水素臭がする。雰囲気はないが、まがい物の「天然温泉」と比べるのも失礼なレベルだ。駐車場と休憩所が使えるのもありがたい。


それにしても、こんなに素晴らしい湯が湧くのに、宿の一軒もないとはもったいない。

2013年5月4日土曜日

沓掛温泉かどや旅館・小倉乃湯

別の趣味の都合で連休の予定はいつもギリギリになるまで決められず、10日前くらいになってあてずっぽうに予約している。まるでダーツの旅、今年は沓掛温泉。結果は正解。地味な温泉地の地味な宿だが、のんびりするということにかけてはこれ以上ない選択だった。


飾り気のない小ぶりの浴場でも、5組程度の客入りであれば十分。泉温が低いので循環加温しているものの、浴槽内の加温口からも源泉を足しているらしく、見かけの投湯量以上にたっぷりオーバーフローしている。単純泉41度、ほんのり硫化水素臭あり。窓から見下ろす田んぼの景色には、鯉のぼりも泳いでいてなかなか気分がいい。


共同浴場の存在も沓掛の魅力。もっとも、連休中ということもあって明るいうちから混雑しており、のんびり入れたのは夜遅くになってからだが。


奥の小浴槽40度、手前は37度未満。いずれも(たぶん)加温なしの源泉そのもの。上田周辺の温泉はどこも似たような泉質で甲乙つけがたいが、温泉臭さに限って並べれば、鹿教湯温泉<沓掛温泉<別所温泉<上山田温泉といったところか。


共同浴場の脇にあるのは足湯、ではなく野菜洗い場。もちろん源泉かけ流し。温泉地というより、河岸段丘上の古い村落というのが沓掛温泉の正体。


2013年4月12日金曜日

下諏訪温泉ぎん月・菅野温泉

諏訪湖周辺はいいお湯が湧くわりに、大型のホテルばかりで宿の選択肢が少ない。源泉かけ流しだけを条件に選んだこの宿、市街地にしては頑張っていて居心地も悪くないが、いかんせん、お湯がゆるい(本当にかけ流し?)。


でも大丈夫、共同浴場より取り見取りだから。まずは徒歩3分、旦過の湯に行ってみた。が、妙に小奇麗な建物と外からでも分かるにぎやかさで、これはちょっと違うぞ、ということでパス。


場違いな浴衣と下駄履きで、下校する高校生に混じり徒歩10分、市街地ど真ん中の菅野温泉へ。どうしてこういう造りになっているのかさっぱり分からないが、薄暗いトンネル状のこのアプローチ、ときめきます。


入口には元電話ボックスらしき小部屋があり、ガラスには趣のある書体で「開湯時間」が表示されている。禿げた真鍮の取っ手類と合わせ、この温泉の歴史を十分に語っている。


中は昔ながらの銭湯そのもので、ずいぶん広い楕円形のタイル張り浴槽にどばどばと源泉が掛け流されている。NaCa硫酸塩・塩化物泉42度。この先数ヶ月、諏訪周辺には何度か来ることになるが、定宿ならぬ定風呂になるだろう、間違いない。

2013年2月22日金曜日

沢渡温泉まるほん旅館・共同浴場

毎年恒例になってきたジジババ接待、今年はおなじみ沢渡を選択。山の斜面に建った温泉は階段だらけ、「バリアフリーって、何?」という世界なので、ここに連れてこられるのは70代中盤の今がラストチャンスだろうとの配慮による。このとおり、浴場にも傾斜45度の階段で下りる。


これが天国のCaNa硫酸塩・塩化物泉。真冬で湯温はやや低く、熱い方の小さめ浴槽でも42度程度。温泉らしいほんのり硫化水素臭がもはや病みつき。


沢渡に来たらやはりキリっと熱い湯は欠かせない。ということで、朝風呂は隣りの共同浴場へ。外来300円、宿泊客は無料。


こちらも浴槽はふたつ、奥の白い方は41度程度で少々ゆるい。入るのはもちろん手前の黒い浴槽、45度。心頭滅却すれば式にがっと入ると、不思議と冷感すら覚える熱さが心地よい。


仕事さえあればここに住み着きたいとさえ思う(と、どこに行っても言ってる気がする)。

2013年1月4日金曜日

越後湯沢温泉白銀閣

復路のビバークもやっぱり適当チョイス、東京への距離重視で越後湯沢にした。雪のおかげで写真写りはいいが、中身はスキー客相手の観光旅館、風呂に対する愛情のかけらもなかった。本来なら取り上げたくもないが、かけ流しのバランスという意味で面白い比較材料なので記録しておく。


まずは貸切風呂。これを岩風呂と名乗る度胸も大したものだが、問題は運用の仕方にある。泉温が50度ほどあるせいで投入量はほんのちょろちょろなのに、清掃もせず30分間隔で次から次へと客を入れるため、夜遅くには湯量は減り、淀んでしまってとても入れたものではない。考えなしにかけ流しなんかにせず、これなら循環にした方がよほど衛生的だ。実際大浴場は循環で、スーパー銭湯だと思えばそれなりに納得できるお湯だった。


唯一の(まぐれ)当たりが露天の「炭釜の湯」。本当に釜を焚いているのかと錯覚するくらい派手に湯気を立てているが、実際手加減なしの熱さで親子連れが悲鳴を上げていた。こちらは逆に高温の源泉をダダ漏れに投入しているためで、これも考えなしの結果だが熱い湯好きにはたまらない。弱アルカリ性単純泉、45度超。湯の回転が良く、しかも誰も入れないおかげでいつでも新湯というのがうれしい。


ただし、湯上がりに腐った床板を踏み抜き(写真右奥)、足を切ったのは余計だった。

2013年1月3日木曜日

湯田川温泉正面の湯・田の湯

連泊中日は雪で散歩もままならず、共同浴場をつまみ食いして終わった。2か所ある共同浴場はいずれも宿の人に鍵を開けてもらう方式、日帰り客は近くの店でお願いする。


宿と同じ泉源のNaCa硫酸塩泉、浴槽が大きめかつ深い分ややぬるく41度程度。相変わらずのどばどばアンバランス投入がすばらしい。10人も入れない浴槽にこれ(この写真では伝わらないか)。もっとも、比率で言えばつかさやの小浴場が頭抜けている。真昼間にもかかわらず、帰省客らしき親子連れなどで人の出入りは多い。


こちらは正真正銘の共同浴場、田の湯。路地の中の目立たない場所にあり飾りっ気皆無、地元専用と思った方がいい。同じく、キーカードでピッと解錠してもらって入る。


外観同様何の変哲もない、しかし手入れの行き届いた浴室。3人入ると肌が触れ合いそうなところに爺様方が次々やってくる。正面の湯がある分どうにも申し訳ない気がし、早々に退散した。お湯はここもまったく同じ。


正月三が日ということもあるだろうが、どちらもなかなか落ち着いて入れなかった。昼間のつかさやは小浴場が男湯になっていたこともあり、結論としては宿でまったりするのがベストだったな、と反省。

2013年1月2日水曜日

湯田川温泉つかさや旅館

モンテディオがJ1に上がった夏、アウェイ観戦のついでにここまで足を延ばした以外鶴岡とは縁もゆかりもないが、娘は私を「だだちゃ」と庄内弁で呼んでいる。と言うか呼ばせている。だが、2歳を過ぎ取り返しがつかなくなった今ごろ、この単語は親族呼称として使えないのではないかと不安を覚え、聞き取り調査を兼ね再訪することにした。もちろん、ここのお湯に感動し、次は冬にと思い続けていたせいでもある。


多くの古い温泉地同様湯田川も外湯を前提にできているからか、宿の内湯はどこも小ぶり、5人も入れば満員の浴室がここでは「ゆったりの湯」と呼ばれている。メインの共同浴場「正面の湯」(上写真奥)の隣りという好立地で泉源至近、その新鮮なお湯をどっぱどっぱと投入している。43度弱という泉温がそのまま入浴適温のおかげで、浴槽サイズと投入量がいい意味でアンバランスになり、理想的な湯温と鮮度を常に保っている。つくづく、かけ流しはバランスが命だな、と。無味無臭のNaCa硫酸塩泉、42度。


極めつけはもう一つの内湯「こじんまりの湯」。よそなら間違いなく家族風呂扱いのミニ浴槽を、ゆったりの湯と同じくらいの勢いで惜し気もなくかけ流している。


この感動的な湯量! 投湯口の黒いライオンが、析出物でなんだかよく分からない生物になっているのもいい味出している。


若い経営者が研究熱心なのだろう、部屋にもロビーにも冷水ポットを常備したり、連泊中に浴衣とバスタオルをこまめに交換してくれたり(←一切しない宿もよくある)、気の利いた温泉宿に共通したさりげないサービスを適度に取り入れているのも好印象だ。もっとも、この風呂は激しく人を選ぶだろうから、誰にでも薦められるわけではないが。

2013年1月1日火曜日

大湯温泉和泉屋旅館・雪華の湯

正月旅行の目的地は山形の鶴岡だが、子連れで1日で行くのはさすがにつらいので、中間の新潟県内でビバークすることにした。宿の選択条件は源泉かけ流しのみ、贅沢は言わない。となると結果は自明、減価償却しまくった温泉街のそれなりの宿と相成る。お世辞にもきれいな宿とは言えないが、ロビーをはじめ中はそこそこ手入れが行き届いていて居心地は悪くない。このくたびれっぷり、実は案外好きだったりする(家族はいい迷惑、か)。


風呂は古びたタイル張りの大浴場のみで露天も貸し切りもない。だが泉源至近のおかげでお湯はやたらにいい。50度近いお湯を適度な広さの浴槽にどぼどぼ注ぎ、全体がむらなく適温で気持ちがいい。単純泉42度。浴室に充満した湯気のかぐわしさ、冬は内風呂に限る。


この温泉街はどの宿も同じくらい古びているが、和泉屋隣りの共同浴場「雪華の湯」だけは場違いに立派で新しい。浴室は定員5~6人程度の標準的な共同浴場サイズで、4対6に分割された浴槽は、狭い方が45度超の高温浴槽、広い方が42度弱の低温浴槽となっている。高温浴槽はかけ流し、低温側も循環装置はあるものの止まっているようだった。正月早々村の人で混み合っていたこともあり、ピリッとした熱いお湯に5分だけ入って上がった。


ここは基本的に地元専用で日帰り客お断りだが、宿泊客は宿でチケットを買って入浴することができる。だが見たところ他の客は地元の人ばかりで(お風呂セット持参でそれと分かる)、しかも爺様方より3~40代の若い衆が多いのは意外だった。