2012年5月12日土曜日

下風呂温泉大湯・つぼた旅館

金曜日、仕事が終わったその足で上野駅に向かい、最後の青森行き夜行「あけぼの」に乗り込んだ。たぶん来春の改正で消えるだろうから騒ぎになる前に乗っておこう、と。


翌朝10時前、青森に到着。そのまま新幹線でとんぼ返りも面白いが、ここまで来て温泉なしというのはやはりもったいない。八甲田方面と悩んだ末、下北半島を北上、津軽海峡を挟んで北海道を望む下風呂温泉に向かうことにした。


まずは共同浴場、大湯。中には有人の番台もあり昔の銭湯とよく似た雰囲気だ。ヒバ板敷きの洗い場と、熱め(45度+)とぬるめ(43度+)のふたつの浴槽に酸性・含硫黄Na塩化物・硫酸塩泉(硫化水素型)がこんこんとかけ流されているのが銭湯との違い。泉質名から想像するほど硫化水素臭は強くないが、浴後の硫黄臭はさすがに強い。それにしても、海沿いでこの泉質は意外だ。


もうひとつの共同浴場新湯(今回はパス)の隣り、つぼた旅館に泊まることにした。どこにでもありそうな飾り気のない旅館だが、風呂は場違いなほど良質な(失礼!)本物温泉のかけ流し。大湯とは源泉違いながら白濁した含硫黄塩化物泉は同じ。しょっぱさと酸っぱさはこちらの方がマイルドで入りやすく、温度も43度程度でちょうどいい(加水してるか?)。


宿の雰囲気と泉質のアンバランスにもびっくりしたが、トイレの窓からふと裏山の斜面を見ると、シラネアオイが雑草然として咲いていたのにはさらに驚いた。関東周辺では高山植物と呼ばれ有難がられるものが、海沿いの温泉地の崖に、それもコンクリートで固めた上に咲いているのには軽くめまいを覚えた(※写真は翌日、別の山で撮影)。


下北には、北海道にも勝る最果て感がある。日本最後の秘境は案外ここかもしれない。

2012年5月5日土曜日

別所温泉南條旅館

連休後半の温泉行きは本来2泊3日で帰宅する予定だったが、2泊目の宿がとんだインチキ宿でビジネスホテルに移動せざるを得なかったため、気分直しに急遽もう一泊することにした。別所温泉なら花屋と行きたいところだが、GW期間中に飛び込みで泊まれるわけがない。よってほぼ適当、たまたま空きのあった南條旅館に投宿した。


見かけはきっぱり昭和型の観光温泉ホテル。となると大浴場もそれなり。お湯は財産区の共同源泉なので悪くはないが、ガラスの向こうにある露天風呂なんかは壁と配管を眺めながらの入浴となり・・・どこもかしこも露天風呂の強迫には悩まされていて気の毒だ。


ということで、というより最初からそのつもりだったわけだが、毎度おなじみ部屋風呂堪能企画となる。ぐんと足を伸ばせる良心的な檜風呂で味わう硫化水素イオン12.4mgの単純硫黄泉は、泉質原理主義者にとっては至福の至り。蛇口から出るお湯は45度程度で、好みの温度に調節するのに具合がいい。こんな低濃度の温泉でもたった1時間で白濁し始めるという、部屋風呂ならではの発見もあった。


リカバリープランとしては十分以上の選択だった。たぶんまた行く、花屋が取れないときに。

2012年5月3日木曜日

沢渡温泉まるほん旅館

一番好きな温泉はどこかと訊かれたら、迷わず沢渡温泉と答える。共同浴場もいいが、まるほん旅館のすばらしい檜の湯小屋が雰囲気上積みでさらにいい。浴室ではなく、湯小屋。有名どころの法師温泉あたりと違い、繁忙期でも混雑しないところがなお良い。


CaNa硫酸塩・塩化物泉、ただし溶存物質1.14g/kgで規定ぎりぎりの薄味。だから飽きない。くの字の大きめ浴槽は41-42度、小さめの四角い浴槽は43-44度で少々熱め。湯の回転が速く新鮮なこちらで、浸かっては冷まし、浸かっては冷ましを繰り返す。檜の板床が気持ちいい。


一方、ベランダに無理やりしつらえたような露天風呂は哀しい。何が哀しいって、ここまでして「露天風呂あり」と表示しなければ客が集まらないご時世が一番哀しい。


すばらしいお湯と風格ある湯小屋、それ以上何が要るんだ。
※湯小屋の写真は昨年のもの(何も変わってないが)。